2018年12月21日金曜日

平成31年度 税制大綱(与党案

平成31年度の税制改正大綱が発表されました。


主な改正点の概要をご紹介します。

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1.所得税

住宅ローン控除拡充/2019年10月取得~(▼減税)※

 現行の期間10年から13年に延長

 消費税率10%適用の契約に限る)

空き家3,000万円控除の延長と拡大/2019年4月譲渡~(▼減税)

 被相続人が老人ホーム等に入所した場合も一定要件で適用可

ふるさと納税制度の見直し/2019年6月1日以降に支出された寄付金~

 返礼品の返礼割合を3割以下とすること

 返礼品を地場産品とすること

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2.個人住民税

◇ひとり親非課税の対象拡大/2021年分~(▼減税) 

 寡婦(寡夫)の非課税措置を未婚ひとり親も対象

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3.法人税

◇研究開発税制の拡充(▼減税)

設立10年以内等のベンチャー企業の税額控除限度額を25%から40%に拡充

 

◇中小企業の軽減税率2年延長/~2021年3月開始事業年度(▼減税)

中小法人等の所得年800万円以下の税率15%(原則19%)を延長

 

◇仮想通貨の時価評価/2019年4月以降終了事業年度~

一定の仮想通貨は時価評価を導入。法定評価方法は移動平均法

 

◇医療機器等の特別償却(所得税も同様)※

病院用CTやMRIの特別償却を2年延長

医療機関の勤務時間短縮用設備(1個30万円以上)について15%特別償却

一定の病院用建物等について8%特別償却

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4.相続税・贈与税

◇個人事業主の事業承継の納税猶予/2019年1月取得~(▼減税)

相続等で個人事業を承継した場合、一定の要件で相続税等の納税を猶予

 

◇教育資金贈与の見直しと延長/2019年1月~

教育資金の範囲を縮小(2019年7月~)等して2年延長

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5.消費税

◇密輸対策

密輸した金地金等は仕入税額控除不適用 

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6.その他

◇自動関連税制※

自動車税の引き下げ/2019年10月以後登録

軽自動車税は据え置き

自動車取得税の代わりとなる「環境性能割」の税率を1%軽減

 

■税制改正スケジュール

12月中旬 与党が税制改正大綱発表
   下旬 財務省・総務省が税制改正大綱発表
1月   税制改正要綱として閣議決定
2月   改正法案 国会上程
3月   改正法案 可決
4月   改正法 施行

2018年4月13日金曜日

取締役会 チェックリスト①

№1305取締役会のチェックリスト
Ⅲ.付議事項チェックリスト
監査項目チェック内容 結果(OK:○、NG:×、やや問題:△、該当無:NA)参考
法令等
 記号コ メ ン ト
【法定付議事項】 取締役会に適正に付議されているか     
1.機関          
  1.株主総会の招集及び議案の決定    会296③
     会298④
          施規063
 2.代表取締役の選定及び解職    会362②三
 3.業務執行取締役の選定及び解職    会363①二
 .取締役会を招集する取締役の決定(定款で定めていない場合)   会366①
  .取締役会設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表の決定   会364
2.取締役会専権事項          
 1.重要な財産の処分及び譲受け   会362④一
 2.多額の借財     会362④二
 3.支配人その他の重要な使用人の選任及び解任    会362④三
          会348③
 4.支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止   会362④四
          会348③
 5.募集社債に関する事項   会362④五
          会676
 6.内部統制システムの整備に関する事項   会362④六
          施規100
 7.役員の損害賠償責任の最低責任限度額までの免除に関する事項   会362④七
   (定款に定めがある場合)   会427
 8.取締役の競業及び利益相反取引の承認    会356
      会365
 9.その他の重要な業務執行の決定    会362④
   ※【非法定付議事項】の例を参照     

2018年3月27日火曜日

2018千鳥ヶ淵 桜開花情報

こんばんは。

2018年のサクラ開花情報です。

場所は千鳥ヶ淵




もうほぼ満開です!!

皆さんお昼からたのしんでいらっしゃいますね

2017年9月6日水曜日

最新の法令に準拠していますか?2

先ほどのつづきです。
 
3 育児・介護休業法関連
1)育児休業の対象となる子に特別養子縁組の監護期間中の子などが含まれているか
 2017年1月に育児・介護休業法が改正施行され、労働者と法律上の親子関係がある実子・養子だけでなく、特別養子縁組の監護期間中の子など、法律上の親子関係がない子についても育児休業を取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(育児休業の対象者など)
1歳に満たない子(実子・養子の他、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親または養育里親に委託されている子)と同居し、養育する労働者が当該子の育児のための休業を希望する場合、育児休業を取得することができる。

2)有期契約労働者が育児休業を取得するための要件は変更済みか
 2017年1月より、有期契約労働者が育児休業を取得するための要件のうち、次のものが改正されました。
改正前:子が1歳に達した後も労働契約が継続する見込みがあり、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約が更新されないことが明らかでないこと
改正後:子が1歳6カ月に達するまでに労働契約が更新されないことが明らかでないこと
 有期契約労働者が育児休業を取得するためには、この要件の他に過去1年以上継続雇用されていることが必要となります。
【規定例】
第○条(育児休業の対象者など)
期間を定めて雇用される労働者にあっては、申し出時点において、次の全てに該当する場合に限り育児休業を取得することができる。
1)入社1年以上であること。
2)子が1歳6カ月に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

3)最大2歳まで育児休業期間を延長できる規定があるか
 労働者は、子が1歳までに保育所に入れないなどの事情がある場合、1歳6カ月まで育児休業期間を延長できます。2017年10月より、子が1歳6カ月に達した時点でも同様の事情がある場合、2歳まで育児休業期間の再延長が可能になります。
 就業規則においては、育児休業期間の延長(1歳6カ月まで)の規定の下に、次のような規定を追加するといいでしょう。
【規定例】
第○条(育児休業期間の再延長)
次の全てに該当する労働者は、子が2歳に達するまでの間で必要な日数の育児休業を取得することができる。
1)労働者または配偶者が原則として子が1歳6カ月に達する日(子の誕生日応当日の前日をいう。)に育児休業を取得していること。
2)次のいずれかの事情があること。
・保育所に入所を希望しているが、入所できない場合。
・労働者の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳6カ月以降育児に当たる予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合。

4)看護休暇と介護休暇が半日単位で取得できるようになっているか
 労働者は、小学校就学前までの子を看護するための看護休暇と、介護を必要とする状態(以下「要介護状態」)の家族を介護するための介護休暇を、1年間にそれぞれ原則5日まで取得できます。2017年1月より、それまで1日単位の取得とされていた看護休暇と介護休暇が半日単位でも取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(子の看護休暇)
子の看護休暇は、半日単位で取得することができる。

第○条(介護休暇)
介護休暇は、半日単位で取得することができる。

5)介護休業が分割取得できるようになっているか
 労働者は、要介護状態の家族を介護するため、対象家族1人につき93日間まで介護休業を取得できます。2017年1月より、それまで原則1回限りの取得とされていた介護休業が、3回まで分割取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(介護休業)
介護休業の申し出は、特別な事情がない限り、対象家族1人につき、延べ93日間までの範囲内で3回を上限とする。

6)所定労働時間の短縮措置等が3年間で2回以上利用できるようになっているか
 企業は、要介護状態の家族を介護する労働者について、所定労働時間の短縮やフレックスタイム制の導入などの措置を講じなければなりません。2017年1月より、それまで介護休業と通算した93日間の範囲内で利用できたこれらの措置が、介護休業とは別に3年間で2回以上利用できるようになりました。
 次の規定例は、所定労働時間の短縮措置を設ける場合について定めたものです。
【規定例】
第○条(介護短時間勤務)
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話をする労働者は、利用開始の日から3年間で2回までの範囲内で、介護短時間勤務の申し出をすることができる。

7)介護のための所定外労働免除の規定があるか
 2017年1月より、労働者が要介護状態の家族を介護するために所定外労働の免除を請求した場合、企業は事業の正常な運営に支障がある場合を除き、労働者に所定外労働をさせることができなくなりました。
【規定例】
第○条(所定外労働の制限)
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。

4 労働契約法関連
1)通算労働契約期間が5年を超える有期契約労働者を無期転換する規定があるか
 2013年4月に労働契約法が改正施行され、2013年4月以降の労働契約期間が通算して5年を超える有期契約労働者(一部例外あり)は、会社に申し込むことで、無期労働契約に転換(以下「無期転換」)することができるようになりました。
 次の規定例は、パートタイマーの無期転換について定めたものです。本章における他の規定例についても同様です。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
労働契約期間が通算して5年を超えるパートタイマーは、別途定める「無期労働契約転換申込書」で申し込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

2)無期転換において労働契約期間が通算されない場合の規定があるか
 有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6カ月以上あると、労働契約期間が通算されません。契約がない期間が6カ月未満の場合も、有期労働契約が1年未満の場合は、労働契約期間が通算されない場合があります。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
無期転換において通算する労働契約期間は、2013年4月1日以降に開始する有期労働契約の契約期間を通算するものとし、現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6カ月以上あるパートタイマーについては、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。なお、1つの有期労働契約の期間が1年未満の場合における通算契約期間に含めるか否かについては、労働契約法およびその関係法令に従うものとする。

3)無期転換後の労働条件の規定があるか
 無期転換後は労働契約期間に関する定めがなくなるため、定年や継続雇用などについて定める必要があります。また、労働者とのトラブルを防ぐため、無期転換の前後における労働条件の変更の有無についても明確にしておくとよいでしょう。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
1)無期転換後の労働時間、休憩時間その他の労働条件については、労働契約期間に関する定めを除き、本就業規則を適用する。
2)無期転換後の雇用については、正社員就業規則第○条(定年)および第○条(継続雇用)を準用する。

5 個人情報保護法関連
1)会社が取り扱う個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定があるか
 2017年5月に個人情報保護法が改正施行され、個人情報を事業で取り扱う全ての会社が個人情報保護法の適用対象となりました。個人情報の取り扱いについては個人情報保護規程などで定めるのが一般的です。さらに就業規則においても、個人情報の漏洩や目的外使用の禁止といった重要項目について、適切な定めがされているか確認しておくとよいでしょう。
 会社が個人情報を取り扱う場合は、採用時の提出書類や健康管理上の個人情報などについて、個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定が必要です。特に健康管理上の個人情報は、今回の法改正で新設された、取り扱いに特に留意すべき「要配慮個人情報」なので、専門家の意見などを参照して規定に不備がないか確認するとよいでしょう。
【規定例】
第○条(採用時の提出書類)
会社は、提出された書類について、第三者への情報漏洩や目的外使用をしてはならない。
第○条(健康管理上の個人情報の取り扱い)
1)会社への提出書類および身上その他の個人情報並びに健康診断書その他の健康情報は、次の目的のために使用する。次の目的以外のためにこれらの情報を使用する場合、会社は必ず労働者の同意を取得しなければならない。
・会社の労務管理、賃金管理、健康管理
・職場または職種の異動等のための人事管理
2)労働者の定期健康診断の結果、労働者から提出された診断書、産業医等の意見書、過重労働対策による面接指導結果その他労働者の健康管理に関する情報は、労働者の健康管理のために使用するとともに、必要な場合には産業医等に診断、意見聴取のために提供するものとする。
3)会社は、労働者から得た健康情報を、前項に掲げる者以外の第三者に漏洩してはならない。

2)労働者が取り扱う個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定があるか
 労働者の個人情報の取り扱いについては、業務上知り得た会社や取引先等に関する情報の漏洩や目的外使用を禁じる規定が必要です。また、個人情報の漏洩や目的外使用は、懲戒の事由として規定する必要があります。
【規定例】
第○条(業務上知り得た情報の取り扱い)
1)労働者は、会社および取引先等に関する情報について、第三者への情報漏洩や目的外使用をしてはならない。また、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。
2)労働者は、職場または職種を異動あるいは退職するに際して、自らが管理していた会社および取引先等に関するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。

第○条(懲戒の事由)
会社は、労働者が次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。
1)業務上知り得た機密を、不正に第三者に開示または漏洩もしくは自らのために使用したとき。

最新の法令に準拠していますか?1

おはようございます。
 
みなさんの会社の法令は、最新の法令に準拠していますか??
ざっと改訂項目別にみてみましょう。
 
1 就業規則は最新の法令に対応していますか?
 就業規則は職場のルールブックであり、多くの労務管理の基準となるものです。一方、就業規則は広範囲をカバーするため、関連する法令改正などに合わせて頻繁に変更しなければなりません。
 特に近年は、男女雇用機会均等法などの労働法に加えて個人情報保護法も改正されるなど、就業規則を変更しなければならない法令改正が相次いでいます。各会社は順次対応しているでしょうが、もしかすると抜け漏れが生じているかもしれません。
 
 
 以降では、改正内容に合わせた就業規則の規定例を紹介します。上表と併せて、就業規則の変更に抜け漏れがないかを確認できます。なお、就業規則の内容は会社によって異なるため、変更に当たっては、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

2 男女雇用機会均等法関連
1)「LGBT(性的少数者)」へのセクシュアルハラスメントを禁止する規定があるか
 男女雇用機会均等法は、「セクシュアルハラスメント」(以下「セクハラ」)に対する防止措置を企業に義務付けています。2017年1月、男女雇用機会均等法で定める防止措置の詳細を定めた「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」が改正施行され、いわゆる「LGBT(性的少数者)」へのセクハラも、防止措置の対象から除外してはならない旨が明確化されました。
 そのため就業規則内でセクハラを定義する際は、労働者等の性的指向や性自認は問わない旨を追記する必要があります。
【規定例】
第○条(セクハラの定義)
セクハラとは、職場における性的な言動に対する労働者等の対応などにより当該労働者等の労働条件に関して不利益を与えること、または性的な言動により他の労働者等の就業環境を害することをいう。セクハラの被害を受ける労働者等の性的指向や性自認は問わない。

2)マタニティーハラスメントの定義がされているか
 2017年1月に男女雇用機会均等法と育児・介護休業法が改正施行され、「マタニティーハラスメント」(以下「マタハラ」)に対する防止措置を講じることが、新たに企業に義務付けられました。マタハラとは、職場における妊娠・出産や産前産後休業・育児休業などの取得を理由とする嫌がらせのことです。
 企業はセクハラと同様、マタハラについても就業規則内で明確に定義する必要があります。次の規定例は、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法がそれぞれ定義するマタハラについてカバーする内容になっています。
【規定例】
第○条(マタハラの定義)
マタハラとは、女性労働者の妊娠または出産、産前産後休業および育児休業の請求、その他の妊娠または出産の事由に関する言動により、当該女性労働者の就業環境が害されることをいう。

3)マタニティーハラスメントの防止措置に関する規定があるか
 マタハラとセクハラに対する防止措置の内容は、ほぼ同じと考えて差し支えないでしょう。そのため、現行のセクハラ防止措置に関する規定について、「セクハラ」と記載している箇所を「セクハラおよびマタハラ」と書き換えるのが最も簡便な対応です。
【規定例】
第○条(セクハラおよびマタハラの防止)
全ての労働者等は、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、セクハラおよびマタハラ、あるいはそれらと疑われる行為をしてはならない。
 なお、この他防止措置に関する規定としては、一般的に次のようなものが考えられます。ただし、就業規則の内容は企業によって異なります。
  • セクハラおよびマタハラに関する相談窓口の設置
  • セクハラおよびマタハラが発生した場合の事後対応
  • セクハラおよびマタハラの原因や背景となる要因を解消するための措置(例:育児休業制度の周知など)
  • セクハラおよびマタハラについての相談者・行為者などのプライバシーの保護
  • セクハラおよびマタハラについての相談、事実関係の確認に協力したことなどを理由とする不利益な取り扱いの禁止

つぎは、育児・介護休業から~

2017年7月25日火曜日

執行役員の法的位置づけについて



                      執行役員制度について解説します。

1.執行役員の法的位置づけ

(1)執行役員制度とは

執行役員制度は、平成9年(1997年)にソニーがわが国ではじめて導入した制度といわれていますが、今日では大企業のみならず中堅中小企業においても導入が進んで います。

当時のわが国の大企業は、取締役が数十名もいる企業も多く見られ、取締役会の肥大化と意思決定の遅さが問題になっていました。そこで、業務の意思決定と執行を分離し、取締役会の機動性の回復と意思決定の迅速化を図るために、執行役員制度が大企業を中心に導入され、次いで中堅中小企業にも普及していったという経緯にありま す。

執行役員制度の導入により、大企業の場合には30名~40名程度もいた取締役は10 名程度に大幅に減少するとともに、事業分野や機能別に業務執行の権限を委譲された 執行役員が2030名程度任命され、スリムになった取締役会の迅速な意思決定のもとに、それぞれの事業の業務執行がなされる体制となりました。

 

(2)執行役員の会社法上の位置づけ

執行役員は、会社法上の役員ではないため、その法的位置づけが問題となります    が、一般には「重要な使用人」に該当し、取締役会設置会社においては、その選任お よび解任については取締役会の決議が必要になると考えられています(会社法362

43号)。

 

(3)執行役員と会社の間の法的関係と執行役員の労働者性

執行役員が「使用人」であるとすれば、執行役員と会社の間の法的関係は、最も典 型的には雇用契約関係であると解することになりますが、実際には、取締役の場合に 準じ、会社を委任者、執行役員を受任者とする委任契約関係と構成するケースも見ら れます。実際上は、雇用型の執行役員は労働基準法上の労働者にあたる一方で、委任 型の執行役員は労働基準法上の労働者にはあたらないものとして区別して運用する実 務が定着しています。

 

(4)執行役員の労働者性の有無がなぜ問題になるのか(問題の所在)

そもそも、「執行役員が労働者かどうか」が、なぜ問題となるのでしょうか。それ は、労働者性の有無により、事故や契約の解除などの問題が発生した場合の法律関係 や救済の内容が大きく異なるからです。

たとえば、執行役員が業務上の災害に遭遇したり、過重労働による精神疾患に羅患
した場合、執行役員が労働基準法上の労働者に該当しなければ、

労災保険から給付を  受ける可能性はなく、また、会社も労働基準法上の補償責任(労働基準法75条以下)  を負いません。

他方で、執行役員が労働基準法上の労働者に該当する場合には、労災  保険の給付が受けられ、また、労働基準法の適用もあることから、会社は補償責任を  免れません。


また、たとえば、執行役員が解任され、会社との間の契約関係が終了する場合、執行役員に労働者性が認められず、会社との法的関係が委任契約関係にある場合には契 約当事者は契約を「いつでも解除できる」(民法6511項)ことから、解雇権濫用      法理(労働契約法16条)の適用は受けません。

しかしながら、執行役員が労働基準法  上の労働者に該当すれば、解任により会社との契約関係を終了させることは「解雇」  にほかならず、したがって、解雇権濫用法理の適用を受け、客観的に合理的な理由が なく、社会通念上、相当と認められない場合には、解任=解雇は無効となります。

さらに、執行役員が労働基準法上の労働者に該当する場合は、執行役員の報酬は
「賃金」に該当することから、賃金支払の4原則(通貨払の原則、直接払の原則、全 額払の原則、毎月1回以上一定期日払の原則)の適用を受けますが、執行役員が労働 基準法上の労働者に該当しない場合には、労働基準法の適用もなく、賃金支払の4原 則の適用もありません。
 
 

2017年7月20日木曜日

取締役会の付議基準①-重要な財産の処分及び譲受けについて

こんにちは。
取締役の決議事項についての相談対応事例です。



取締役会の付議基準①-重要な財産の処分及び譲受けについて
ご相談内容

当社は、資本金は5億円、総資産は30億円の取締役会設置会社です。また、今回の譲渡対象不動産の簿価は2億円です。
今般、当社所有の不動産を取引先企業に譲渡するという話が持ち上がっています。
ついては、以下の点についてご教示ください。

(1)会社法362条4項1号では、重要な財産の処分及び譲受けをする場合は、取締役会の承認が必要とされていますが、ここでいう財産には不動産のほかにどのようなものが該当するのでしょうか。

(2)今回の金額は「重要な財産の処分」に該当するのでしょうか。

回答
以下のとおりご回答申し上げます。

(1)について
 不動産のほか、動産、有価証券、知的財産権等が財産に含まれます。また、財産の処分には、寄付、賃貸、担保設定、債務免除なども含まれ、譲受けには、設備投資、賃借なども含まれると解されています。


(2)について
 具体的にどの程度の金額が「重要」にあたるかについての基準はありませんので、社会通念にしたがって判断することになりますが、会社の事業規模に応じて会社自身が判断することになります。財産の処分に関する判例では、「当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、保有目的、処分の態様、従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断される(最判平6年1月20日)。」とされています。

 
 ちなみに、商事法務「新・取締役会ガイドライン(東京弁護士会会社法部編)」の143ページでは、「取締役会の専決事項となる『多額』の基準は、各会社において一律に定める必要なく、むしろ、財産の種類、処分および譲受けの態様により各基準を設定するべきである。」としながらも、その種別毎に以下を目安とし、「各会社の規模、事業の状況、財産の状態等から各会社において取締役会の決議を経るのを相当とするか否かという観点から決せられるべきである。」としています。


①寄付金 →「会社の貸借対照表上の総資産額の0.01%に相当する額程度」
②債務免除→「会社の貸借対照表上の総資産額の0.1%に相当する額程度」
③上記以外→「会社の貸借対照表上の総資産額の1%に相当する額程度」


 さらに、「実務的にはこれらの要素を勘案して、具体的な金額が定められている。また、そのような具体的基準を補充するものとして、
『右金額(右基準)にかかわらず当会社の営業に重要な影響を与えるもの』という抽象的、補充的基準を付加すべきである。(前掲ガイドライン143ページ)」とし、たとえば、不動産については、「量的な重要性の目安に加えて、当該不動産が営業上の拠点となりうるか否か、本社屋などのように会社法上重要なものであるか否かなど質的な重要性を勘案してその重要性が決せられる。(前掲ガイドライン146ページ)」としています。

 なお、前掲判例(最判平6年1月20日)では、会社の総資産の約1.6%にあたる帳簿価額の株式の譲渡が、その他の事情も勘案した上で重要な資産の処分に該当するとしています。