2012年12月23日日曜日

役員退職金を分割払いした場合の税務

役員退職金を分割払いした場合の税務

役員が退職したときの役員退職金について、資金繰り等を考慮して全額を一時払いではなく、分割払いとした場合の税務上の取り扱いはどのようになるのでしょうか?

役員退職金は、原則としてその支給が確定した年度の費用になります。ただし、複数年度に渡って分割支給した場合には、それぞれの年度の経費とすることも可能です。(法基通9-2-28)

支給が確定した年度とは、株主総会の決議等で支給金額が確定した日の属する事業年度を指しますが、その年度に未払計上することが原則的な処理とされています。
一方、実際の支給日が属する事業年度において、その支払った額を費用計上することも認められています。

役員退職金の分割払いが長期に及ぶ場合には、退職年金とみなされる可能性がありますので、注意が必要です。
役員退職年金は退職後の役員の生活を保障するもので、離職後の生活の安定を図るための制度です。退職金を年金で支給する場合には、株主総会の決議等のあった日ではなく、実際に年金を支給すべき時の損金の額に算入することとなります。

・役員退職金の長期分割払いと退職年金の違い
その会社の制度として退職年金制度を整備し、その規程があるならば、退職年金とみなされますが、そういった規程がない場合には、実態に即して判断せざるを得なくなります。
税法では、その判断基準を明確にしていませんが、10年、20年と分割払いする場合等には、
実質として、退職年金と変わらないと判断される可能性があります。退職一時金の分割として処理されたい場合には、2~3年の分割支給が実務上の妥当なところだと思います。

・退職一時金としてもらう場合と退職年金としてもらう場合の税金の違い
では、退職金を一時金としてもらう場合と、年金としてもらう場合でどのような税務上の違いがあるのでしょうか。
退職一時金は「退職所得」に該当し、退職一時金の額から勤続年数に一定の金額を乗じて計算した金額を控除し、さらにその金額を2分の1した金額に税率をかけて計算します。
給与所得等の他の所得と合算せずに税率をかけるため、優遇されています。

一方、退職年金は、その支給を受けた年の「雑所得」に該当し、他の所得と合算されて
総合課税されることになります。
一般的には、「退職所得」の方が、税額が安くなり納税者有利と考えられています。

実際に分割払いで役員退職金を支給する場合は、総会の議事録、支払時期や支払金額等に関する資料を整備し、恣意的な損金算入と受け取られないにすることをお勧め致します。
翌年以降の分割払時に損金算入する場合におきまして、年毎に支払金額や支払時期が異なっていますと、決算をにらんだ恣意的な操作をしていると受け取られる可能性があり危険だと思います。