以下のとおりご回答申し上げます。
(1)について
不動産のほか、動産、有価証券、知的財産権等が財産に含まれます。また、財産の処分には、寄付、賃貸、担保設定、債務免除なども含まれ、譲受けには、設備投資、賃借なども含まれると解されています。
(2)について
具体的にどの程度の金額が「重要」にあたるかについての基準はありませんので、社会通念にしたがって判断することになりますが、会社の事業規模に応じて会社自身が判断することになります。財産の処分に関する判例では、「当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、保有目的、処分の態様、従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断される(最判平6年1月20日)。」とされています。
ちなみに、商事法務「新・取締役会ガイドライン(東京弁護士会会社法部編)」の143ページでは、「取締役会の専決事項となる『多額』の基準は、各会社において一律に定める必要なく、むしろ、財産の種類、処分および譲受けの態様により各基準を設定するべきである。」としながらも、その種別毎に以下を目安とし、「各会社の規模、事業の状況、財産の状態等から各会社において取締役会の決議を経るのを相当とするか否かという観点から決せられるべきである。」としています。
①寄付金 →「会社の貸借対照表上の総資産額の0.01%に相当する額程度」
②債務免除→「会社の貸借対照表上の総資産額の0.1%に相当する額程度」
③上記以外→「会社の貸借対照表上の総資産額の1%に相当する額程度」
さらに、「実務的にはこれらの要素を勘案して、具体的な金額が定められている。また、そのような具体的基準を補充するものとして、
『右金額(右基準)にかかわらず当会社の営業に重要な影響を与えるもの』という抽象的、補充的基準を付加すべきである。(前掲ガイドライン143ページ)」とし、たとえば、不動産については、「量的な重要性の目安に加えて、当該不動産が営業上の拠点となりうるか否か、本社屋などのように会社法上重要なものであるか否かなど質的な重要性を勘案してその重要性が決せられる。(前掲ガイドライン146ページ)」としています。
なお、前掲判例(最判平6年1月20日)では、会社の総資産の約1.6%にあたる帳簿価額の株式の譲渡が、その他の事情も勘案した上で重要な資産の処分に該当するとしています。
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