2012年12月24日月曜日

高値で自己株式を買い取ってしまうとみなし配当課税

高値で自己株式を買い取ってしまうとみなし配当課税

自己株式とは、自社で保有している自社株式を指しますが、自己株式の取得を検討している会社も多いのではないでしょうか?

自己株式の取得のメリットとして、①財務指標の改善や②ストックオプションへの活用、③敵対的買収に対する防衛、④合併や会社分割などの企業再編への活用、⑤中小企業での相続対策等があります。
    「1株当たりの当期純利益」という財務指標がありますが、自己株式を取得して、株式を消却することにより、発行済み株式総数が減ります。当期純利益が前期と同額計上することができれば、1株当たりの当期純利益が増加し、株価の向上を期待できます。
    ストックオプションは、役員や従業員に対して、報酬や給料の代わりに会社の新株予約権を付与する制度ですが、将来業績が向上し株価が上昇したときに新株予約権を行使すれば、その分利益が得られます。
自己株式を保有しておくと、役員や従業員からストックオプションの権利行使があったときに、わざわざ新株を発行する必要がなく、費用も節減できます。
    大株主や連携先が何らかの理由で株式を手放すこととなったとき、株価が下落し、買収されやすくなります。一時的に会社が自己株式を取得することにより、敵対的買収を防ぐことができます。
    株式を対価とする企業組織再編を行う際に、新株発行に代えて自己株式を割り当てることで、効率的な組織再編の実現が可能となります。
    非上場会社が株式の相続を受けた人から自己株式を取得する場合で一定の要件をみたすものは、配当所得課税の対象外とされ、譲渡益課税のみが課されるます。自己株式を取得することによって、相続人は相続税の支払い資金に充てることができます。

自己株式の取得は、株主総会の決議等所定の手続きを経れば、原則として会社の自由に行うことができるとされています。
取得した自己株式の会計処理は、その取得原価をもって「純資産の部」の株主資本から控除し、期末に保有する自己株式は、一括して純資産の部の株主資本の末尾に控除する形式で表示します。
一方、税務処理では、自己株式は有価証券として取り扱われてきましたが、平成18年の
税制改正で、資本金等の額の控除項目とすると明確に定義されました。
取得対価の額のうち、取得株式に対応した資本金等の額(取得資本金額)だけ資本金等の額を
減額し、その金額を超える部分の金額については、利益積立金額を減額することとされま
した。発行法人が有償により自己株式を取得した場合には、その株式を譲渡した株主には、
みなし配当と株式譲渡損益が生じ、発行法人においては、みなし配当の額に相当する金額が源泉徴収の対象となります。

取得資本金=取得法人のその自己株式の取得直前の資本金等の額÷取得直前の発行済株式の総数×その自己株式の取得に係る株式の数

取得資本金額の計算上は、発行済み株式の数から、既に有している自己株式の数を除いて
計算します。なお、株主に交付した金銭等の額が、上記算式により算出した取得資本金額
に満たない場合は、実際に交付した金銭等の額を取得資本金額とみなして資本金等の額を
減少させます。逆に、株主に交付した金銭等の額が取得資本金額を超える場合には、その
超える部分の金額だけ発行法人の利益積立金を減少させます。この減少させる利益積立金
額は、株主においてみなし配当として課税されます。

減少する利益積立金額=交付金銭等の合計額-取得資本金額

【事例】
(前提)
自己株式取得直前の取得法人の純資産の部
(会計上)                 (税務上)
資本金       100         資本金等      200
その他資本剰余金  100         利益積立金   1,000
利益剰余金   1,000         合計      1,200
合計      1,200

    発行済み株式総数は10株
    株主より1株100で自己株式を取得


<会計上の仕訳>
自己株式    100   現金預金    84
              預り金     16

<税務上の仕訳>
資本金等     20(※1)   現金預金    84
利益積立金    80(※2)   預り金     16
※1 減少する資本金等
    資本金等 200÷10株×1株=20(取得資本金額)
※2 減少する利益積立金
    交付金銭 100-取得資本金額20=80

<税務調整仕訳>
資本金等     20   自己株式    100
利益積立金    80   
この場合の自己株式の取得は、会計上、資本取引となるため、会計上の損益に影響はなく、税務上も所得計算の過程には影響しません。
消費税法上の取扱い
株主からその発行法人への、自己株式としての株式の引き渡しは、証券市場での買い入れによる取得を除いて、消費税はかかりません。(不課税取引)
発行法人における自己株式の取得に対する消費税法上の取り扱いも、不課税取引となります。