2013年2月17日日曜日

うつ病の社員の処遇

こんにちはabeisa です。
「うつ病の社員は解雇できないのか?」についてです。
うつ病を代表とするメンタル不全に関するご相談は 増えており、
たとえば、「うつ病のため、働けないから解雇したい」
というものもあります。
もちろん、社員が精神疾患であるだけで解雇はできませんが、
◆業務に多大なる支障がある
◆勤務態度が不良の場合
などの場合は解雇ができる場合もあります。
精神疾患の社員の解雇を有効とした裁判があります。
<東京国税局長事件 東京地裁 平成3年4月>
○ 麻布税務署の署員が長期欠勤
○ 再三にわたり出勤命令、専門医への受診を打診
○ これらに応じないため、免職処分とした
○ 裁判で免職は有効とされた
<豊田通商事件 名古屋地裁 平成9年7月>
○ 業務命令違反、業務妨害、物品の持ち出しを 行った社員につき、
精神疾患と判断し、会社は治療を受けさせた
○ 正常な勤務ができるように協力したが、結局は 解雇
○ 裁判で解雇は有効とされた
このように精神疾患等の場合でも解雇が有効という 事例もあるので、
「精神疾患だから解雇できない」ということではないのです。
ただし、前提条件があります。
精神疾患等の社員が出たら、会社としてやるべきこと!
それは
◆ 業務の軽減
◆ 専門医への受診のすすめ
◆ 治療への協力(例:休職等の検討)
等の対応です。
これを怠って、いきなり重い懲戒処分や解雇を課す場合は
無効となる可能性が高くなるのです。
実際に裁判で解雇が無効となったケース
<日本ヒューレット・パッカード事件 最高裁 平成24年4月>
〇 精神不調の社員が約40日間無断欠勤をした
〇 理由は職場の嫌がらせとのことだったが、会社は被害妄想と判断
〇 欠勤を理由に解雇を実施
〇 社員が解雇無効と裁判を起こした
そして、最高裁は以下の結論としました。
〇 社員に対し、精神科医による健康診断などを実施すべき
〇 診断結果に応じて、休職等の検討をすべき
〇 上記の過程を踏まず、無断欠勤での解雇は無効である
このように、まずは社員に対して「やるべきこと」 を行わないと
解雇等の判断はできないのです。
ですから、
まずは専門医への受診をすすめましょう。
本人が嫌がっても業務に支障が出ている場合は、業務命令として受診させましょう。
そして、診断結果によって
◆ 配置転換
◆ 業務の軽減
◆ 休職命令
などを実施するのです。
その後、社員へのヒアリング等を繰り返し、病状の報告を求めましょう。
仮に休職期間が満了となって退職する場合でも、
退職前に病状の報告などをヒアリングしておくことが必要です。
※ 休職期間が満了となった場合、退職になることが原則です。(就業規則)
それがトラブルにならないようにするコツです。
うつ病等の精神疾患は業種を問わず増加傾向にあります。
実際、厚生労働省のホームページ(HP)による と、精神疾患の患者数は
〇 平成11年・・・204万人
〇 平成14年・・・258万人
〇 平成17年・・・302万人
〇 平成20年・・・323万人
となっています。
なお、厚生労働省のHP内にメンタルヘルスの総合サイトもあり、
こころの病気を知る、治療や生活のサポート、国の政策と方向性などが
記載されています。
具体的なケースが取り上げられているので、一度ご 覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html