2017年4月24日月曜日

出向者に対する給与・退職金

 

Q.出向者に対する給与及び退職金の取り扱いについて教えてください。


A.「出向」とは、一の企業がその雇用する従業員(使用人又は役員)を


一定の身分関係を残したまま(具体的には休職にし)、


もっぱら人格の異なる他の企業のために労務に服させるもので、


派遣、社外勤務、企業間配転などの名称に拘わらず、


このような内容のものはすべて「出向」に当たります。



【出向者に給与等を支給する場合】
 法人の使用人が他の法人へ出向した場合のその出向者に対する給与は、

出向元法人から支給される場合と、出向先法人から支給される場合とがあります。


Ⅰ 出向先法人が支給する場合
 出向者は出向元法人の使用人ですが、出向先法人にとっても自己の使用人ですから、

給与の支給を要することとなり、一般の例により、税法の適用を行うことになります。


Ⅱ 出向先法人が給与を支給し、出向元法人が較差補てん金を支出する場合

 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補てんするため、出向者に対して支給した給与は、出向元法人の損金の額に算入されます。

 この場合の源泉徴収事務は、出向者に直接支給する場合は、出向元法人は通常、月額表乙欄を適用して所得税を源泉徴収し、出向先法人を通じて支給する場合には、

出向元法人では源泉徴収を要せず、出向先法人が給与を支払う際に、併せて所得税を源泉徴収することとなります。

 また、較差補てん金は、給与として取り扱われますから、消費税の課税仕入れには該当しません。

 
Ⅲ 出向元法人が給与を支給し、出向先法人が給与負担金を支出する場合

 出向者に対して出向元法人が給与を支給し、出向先法人は自己の負担すべき給与相当額を

出向元法人へ支出した時は、当該給与の負担金の額は名目の如何に拘わらず、

出向先法人における当該出向者の給与として取り扱われます。

 この場合、出向先法人ではその給与の負担金に対する所得税の源泉徴収は要せず、

出向元法人が給与を支払う際に源泉徴収することになります。

また、給与として取り 扱われますから、消費税の課税仕入れには該当しません。


なお、給与負担金として支出した金額が、出向元法人が出向者に支給する給与の額を超えている場合、

その超過額は出向先法人にとっては給与負担金としての性質はなくなり、

支払うことに相当の理由がない場合には、出向元法人に対し寄付金を支出したものとして取り扱われ、


消費税の課税仕入れには該当しません。

その超過額が、例えば、経営指導料として支払われており、

支払うことに相当の理由があり、適正な額の範囲内のものであれば

損金算入が認められ、その部分の消費税の取り扱いは、出向元法人での課税売上げに、

出向先法人での課税仕入れに該当します。


 また、出向者が出向先の法人において役員である場合で次のいずれにも該当するときは、
法人税法第34条(役員給与の損金不算入)の規定が適用されます。

 イ その役員に係る給与負担金の額について、その役員に対する給与として

出向先法人の株主総会等の決議がされていること。


 ロ 出向契約等において出向期間、給与負担金の額があらかじめ定められていること。



【出向者に退職給与を支給する場合】
 出向者が出向元法人に戻り、後日退職した場合に支給する退職給与は、

出向元法人において支給されますが、そのうち出向中の期間に対応する金額は

出向先法人において負担すべきものであり、通常、出向先法人から出向元法人へ負担金が支出されます。

 この負担金の支出する時期として、
 ① 出向先法人から出向元法人へ復帰した時
 ② 出向元法人を退職した時
 ③ 出向期間中
があり、

①、②の場合には、原則として出向先法人が支出した事業年度の損金の額に算入されます。

 ③の場合には、次の二つの要件のいずれにも該当するときは、
出向先法人の支出した事業年度の損金の額に算入されます。


 ① あらかじめ定めた負担区分に基づいて定期的に支出していること。

 ② その支出する金額が、出向期間に対応する退職金の負担額として合理的に計算された金額であること。