2017年9月6日水曜日

最新の法令に準拠していますか?2

先ほどのつづきです。
 
3 育児・介護休業法関連
1)育児休業の対象となる子に特別養子縁組の監護期間中の子などが含まれているか
 2017年1月に育児・介護休業法が改正施行され、労働者と法律上の親子関係がある実子・養子だけでなく、特別養子縁組の監護期間中の子など、法律上の親子関係がない子についても育児休業を取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(育児休業の対象者など)
1歳に満たない子(実子・養子の他、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親または養育里親に委託されている子)と同居し、養育する労働者が当該子の育児のための休業を希望する場合、育児休業を取得することができる。

2)有期契約労働者が育児休業を取得するための要件は変更済みか
 2017年1月より、有期契約労働者が育児休業を取得するための要件のうち、次のものが改正されました。
改正前:子が1歳に達した後も労働契約が継続する見込みがあり、子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約が更新されないことが明らかでないこと
改正後:子が1歳6カ月に達するまでに労働契約が更新されないことが明らかでないこと
 有期契約労働者が育児休業を取得するためには、この要件の他に過去1年以上継続雇用されていることが必要となります。
【規定例】
第○条(育児休業の対象者など)
期間を定めて雇用される労働者にあっては、申し出時点において、次の全てに該当する場合に限り育児休業を取得することができる。
1)入社1年以上であること。
2)子が1歳6カ月に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

3)最大2歳まで育児休業期間を延長できる規定があるか
 労働者は、子が1歳までに保育所に入れないなどの事情がある場合、1歳6カ月まで育児休業期間を延長できます。2017年10月より、子が1歳6カ月に達した時点でも同様の事情がある場合、2歳まで育児休業期間の再延長が可能になります。
 就業規則においては、育児休業期間の延長(1歳6カ月まで)の規定の下に、次のような規定を追加するといいでしょう。
【規定例】
第○条(育児休業期間の再延長)
次の全てに該当する労働者は、子が2歳に達するまでの間で必要な日数の育児休業を取得することができる。
1)労働者または配偶者が原則として子が1歳6カ月に達する日(子の誕生日応当日の前日をいう。)に育児休業を取得していること。
2)次のいずれかの事情があること。
・保育所に入所を希望しているが、入所できない場合。
・労働者の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳6カ月以降育児に当たる予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合。

4)看護休暇と介護休暇が半日単位で取得できるようになっているか
 労働者は、小学校就学前までの子を看護するための看護休暇と、介護を必要とする状態(以下「要介護状態」)の家族を介護するための介護休暇を、1年間にそれぞれ原則5日まで取得できます。2017年1月より、それまで1日単位の取得とされていた看護休暇と介護休暇が半日単位でも取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(子の看護休暇)
子の看護休暇は、半日単位で取得することができる。

第○条(介護休暇)
介護休暇は、半日単位で取得することができる。

5)介護休業が分割取得できるようになっているか
 労働者は、要介護状態の家族を介護するため、対象家族1人につき93日間まで介護休業を取得できます。2017年1月より、それまで原則1回限りの取得とされていた介護休業が、3回まで分割取得できるようになりました。
【規定例】
第○条(介護休業)
介護休業の申し出は、特別な事情がない限り、対象家族1人につき、延べ93日間までの範囲内で3回を上限とする。

6)所定労働時間の短縮措置等が3年間で2回以上利用できるようになっているか
 企業は、要介護状態の家族を介護する労働者について、所定労働時間の短縮やフレックスタイム制の導入などの措置を講じなければなりません。2017年1月より、それまで介護休業と通算した93日間の範囲内で利用できたこれらの措置が、介護休業とは別に3年間で2回以上利用できるようになりました。
 次の規定例は、所定労働時間の短縮措置を設ける場合について定めたものです。
【規定例】
第○条(介護短時間勤務)
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話をする労働者は、利用開始の日から3年間で2回までの範囲内で、介護短時間勤務の申し出をすることができる。

7)介護のための所定外労働免除の規定があるか
 2017年1月より、労働者が要介護状態の家族を介護するために所定外労働の免除を請求した場合、企業は事業の正常な運営に支障がある場合を除き、労働者に所定外労働をさせることができなくなりました。
【規定例】
第○条(所定外労働の制限)
要介護状態にある対象家族を介護する労働者が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。

4 労働契約法関連
1)通算労働契約期間が5年を超える有期契約労働者を無期転換する規定があるか
 2013年4月に労働契約法が改正施行され、2013年4月以降の労働契約期間が通算して5年を超える有期契約労働者(一部例外あり)は、会社に申し込むことで、無期労働契約に転換(以下「無期転換」)することができるようになりました。
 次の規定例は、パートタイマーの無期転換について定めたものです。本章における他の規定例についても同様です。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
労働契約期間が通算して5年を超えるパートタイマーは、別途定める「無期労働契約転換申込書」で申し込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

2)無期転換において労働契約期間が通算されない場合の規定があるか
 有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6カ月以上あると、労働契約期間が通算されません。契約がない期間が6カ月未満の場合も、有期労働契約が1年未満の場合は、労働契約期間が通算されない場合があります。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
無期転換において通算する労働契約期間は、2013年4月1日以降に開始する有期労働契約の契約期間を通算するものとし、現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6カ月以上あるパートタイマーについては、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。なお、1つの有期労働契約の期間が1年未満の場合における通算契約期間に含めるか否かについては、労働契約法およびその関係法令に従うものとする。

3)無期転換後の労働条件の規定があるか
 無期転換後は労働契約期間に関する定めがなくなるため、定年や継続雇用などについて定める必要があります。また、労働者とのトラブルを防ぐため、無期転換の前後における労働条件の変更の有無についても明確にしておくとよいでしょう。
【規定例】
第○条(無期転換制度)
1)無期転換後の労働時間、休憩時間その他の労働条件については、労働契約期間に関する定めを除き、本就業規則を適用する。
2)無期転換後の雇用については、正社員就業規則第○条(定年)および第○条(継続雇用)を準用する。

5 個人情報保護法関連
1)会社が取り扱う個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定があるか
 2017年5月に個人情報保護法が改正施行され、個人情報を事業で取り扱う全ての会社が個人情報保護法の適用対象となりました。個人情報の取り扱いについては個人情報保護規程などで定めるのが一般的です。さらに就業規則においても、個人情報の漏洩や目的外使用の禁止といった重要項目について、適切な定めがされているか確認しておくとよいでしょう。
 会社が個人情報を取り扱う場合は、採用時の提出書類や健康管理上の個人情報などについて、個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定が必要です。特に健康管理上の個人情報は、今回の法改正で新設された、取り扱いに特に留意すべき「要配慮個人情報」なので、専門家の意見などを参照して規定に不備がないか確認するとよいでしょう。
【規定例】
第○条(採用時の提出書類)
会社は、提出された書類について、第三者への情報漏洩や目的外使用をしてはならない。
第○条(健康管理上の個人情報の取り扱い)
1)会社への提出書類および身上その他の個人情報並びに健康診断書その他の健康情報は、次の目的のために使用する。次の目的以外のためにこれらの情報を使用する場合、会社は必ず労働者の同意を取得しなければならない。
・会社の労務管理、賃金管理、健康管理
・職場または職種の異動等のための人事管理
2)労働者の定期健康診断の結果、労働者から提出された診断書、産業医等の意見書、過重労働対策による面接指導結果その他労働者の健康管理に関する情報は、労働者の健康管理のために使用するとともに、必要な場合には産業医等に診断、意見聴取のために提供するものとする。
3)会社は、労働者から得た健康情報を、前項に掲げる者以外の第三者に漏洩してはならない。

2)労働者が取り扱う個人情報の漏洩や目的外使用を禁止する規定があるか
 労働者の個人情報の取り扱いについては、業務上知り得た会社や取引先等に関する情報の漏洩や目的外使用を禁じる規定が必要です。また、個人情報の漏洩や目的外使用は、懲戒の事由として規定する必要があります。
【規定例】
第○条(業務上知り得た情報の取り扱い)
1)労働者は、会社および取引先等に関する情報について、第三者への情報漏洩や目的外使用をしてはならない。また、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。
2)労働者は、職場または職種を異動あるいは退職するに際して、自らが管理していた会社および取引先等に関するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。

第○条(懲戒の事由)
会社は、労働者が次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。
1)業務上知り得た機密を、不正に第三者に開示または漏洩もしくは自らのために使用したとき。