個人事業主の方へ 青色申告特別控除制度を利用しましょう
確定申告の時期が近付いてまいりましたが、個人事業主の方や不動産所得のある方は青色申告特別控除制度を利用されていますか?
通常は売上などの収入から必要経費を差し引いた金額が個人事業や不動産所得の金額となりますが、青色申告特別控除制度はさらにそこから65万円(若しくは10万円)を引くことができるのです。
青色申告特別控除を利用するためには、まず青色申告の申請手続をしなければなりません。
申請手続の期限は以下の通りです。
1. 原則として、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。
2. 新規開業した場合は、業務を開始した日から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出してください。
3. 相続により業務を承継した場合
① 被相続人が白色申告者で、その年の1月16日以降に業務を承継した場合・・・業務を承継した日から2ヶ月以内
② 被相続人が青色申告者で、死亡の日がその年の1月1日~8月31日までの場合・・・死亡の日から4ヶ月以内
③ 被相続人が青色申告者で、死亡の日がその年の9月1日~10月31日までの場合・・・その年の12月31日
④ 被相続人が青色申告者で、死亡の日がその年の11月1日~12月31日までの場合・・・翌年の2月15日
青色申告制度とは、事業所得や不動産所得、山林所得がある人がその収入金額や必要経費に関する日々の書類の保存と一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人について有利な取り扱いが受けられる制度です。
青色申告者の記帳は原則として、正規の簿記の原則に基づく記帳により、貸借対照表と損益計算書を作成できるようにすることですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。
帳簿の保存義務は原則7年間です。
青色申告の特典として代表的なものは以下の通りです。
① 青色申告特別控除(65万円Or10万円)
② 青色事業専従者給与・・・生計を一にしている15歳以上の親族に支払った給料を必要経費に算入
③ 貸倒引当金
④ 純損失の繰越しと繰戻し・・・事業所得等の損失を翌年以降3年間に渡って繰越できる
冒頭で述べた青色申告制度の特典の一つである青色申告特別控除には、65万円の控除と10万円の控除がありますが、65万円の控除を受けられるための要件は次の通りです。
1.不動産所得(事業的規模)又は事業所得がある。
2.これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般に複式簿記)により記帳している。
3.2の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を添付した確定申告書を3月15日までに提出すること。
※現金主義によることを選択している人は、65万円控除は受けられません。
※不動産の事業的規模とは、貸間やアパートはおおむね10室以上、独立家屋の貸付は5棟以上で判断します。家屋は1棟でアパート2室、駐車場は5件でアパート1室分と計算し、トータルで5棟又は10室を満たしているかで判断します。事業的規模に該当するかは実態も考慮されるので、上記基準以下でも事業的規模に該当する場合もあります。
この3点の要件を満たしていない青色申告者は10万円の控除しか受けることができません。
では、65万円控除を受けられる場合の具体的なメリットを事例を挙げて見てみましょう。
○事例
個人事業主Aさんの一年間の収入と支出は以下の通りでした。
・1年間の収入 1,500万円
・1年間の必要経費 700万円
・国民年金の支払額 18万円
・国民健康保険の支払額 22万円
①所得金額を計算します。
A.白色申告の場合 B.青色申告の場合
売上高 1,500万円 売上高 1,500万円
必要経費 -700万円 必要経費 -700万円
所得金額 800万円 青色申告控除 -65万円
所得金額 735万円
②次に所得から所得控除額を差し引いて、課税所得を計算します。
A.白色申告の場合 B.青色申告の場合
所得金額 800万円 所得金額 735万円
国民年金 -18万円 国民年金 -18万円
健康保険 -22万円 健康保険 -22万円
基礎控除 -38万円 基礎控除 -38万円
課税所得 722万円 課税所得 657万円
③課税所得に所得税の税率をかけて所得税額を計算します。
A. 白色申告の場合 B.青色申告の場合
722万円×23%-636,000円 657万円×20%-427,500円
722万円×23%-636,000円 657万円×20%-427,500円
=1,024,600円 =886,500円
⑤ 所得税の差額
1,024,600円-886,500円=138,100円
白色申告だったAさんが青色申告の65万円控除を受けることによって、所得税138,100円、住民税は、650,000円×10%=65,000円、さらに健康保険料も安くなります。