こんな質問をされることがあります。
「今年は儲かったので、何か節税策はありませんか?ただ、売掛債権の回収が遅れているので、来月(翌期首月)ならお金があるんだけど・・・。」
そんなときは、従業員の皆さんに決算賞与を出したらいかがでしょうか?
不景気の折、給料のベースアップもなく定期賞与(夏季、冬季)も減額されている会社も多いことと思います。多額の利益が見込める期に、従業員に利益の還元することは労働意欲の向上のためにも有効であり、節税効果もあります。
決算賞与を未払の状態で、当期の損金(費用)に算入するためには、以下の3要件を満たす必要があります。
① 決算日までに決算賞与の支給額を各人別に受給者全員に通知していること。
② 決算日後一ヶ月以内に受給者全員に支払っていること。
③ 決算で、その決算賞与の額を経費(損金経理)として処理していること。(仮払金等は×)
(法人税施行令第72条の3第2号イ)
決算日までに各人別に受給者全員に通知することとなっているので、各個人別にいつまでにいくら支払いますよという通知を提示し、署名捺印をもらっておくと、後々税務調査などでの確認書類となります。
一部の人だけへの通知や、総額でいくら支払いますよといった通知では①の要件を満たしません。
②については、決算後一ヶ月以内に銀行から振込支給しておけば、支給の証拠となります。
現金で支給する場合は、従業員から受給確認書類にサインをもらっておいたほうが良いでしょう。
※注意事項(以下の場合、損金算入した決算賞与全額が認められません。)
・会社の就業規則等で、支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合、その支給額の通知は上記①の通知に該当しないとされています。(法人税基本通達9-2-43)
結果的に、全員に支給していたとしてもアウトです。
・また、決算日後一ヶ月以内に、たった一人にでも支給できなかった場合や通知した金額と異なる金額を支給した場合、その一人分だけではなく、決算期に計上した賞与全額が否認されてしまいます。
決算賞与はすべての社員に対して一律に支給しなくても構いません。会社への貢献度などを考慮して、
支給額に変化をつけることも可能です。
経営陣が支給する意図をしっかりと説明して、社員の貢献に対する感謝の意を表し、従業員のモチベーション
のアップと企業業績の更なる向上を目指しましょう。
以前、3月決算の会社で、例年6月の賞与を4月に前倒支給して決算賞与にしているところがありましたが、
社員の皆さんの反応は冷ややかなものでした。決算賞与も使いようといったところでしょうか。