2017年5月16日火曜日

民法改正!!

今国会で成立見込みとなった民法改正法案
 
 

4 月14 日に民法改正法案が衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。本
法案は、2015 年3 月31 日に衆議院に提出されたものですが、2 年あまりの歳月を経て、
今通常国会でようやく成立の見通しとなりましたね。


今回の改正は、制定以来120 年が経過し、時代にそぐわない規定も存在するため、契
約を中心に債権関係の規定を全面的に見直すというもので、「判例や従前の解釈の明文
化」と「現代化」がキーワードとされています。

前者には、「賃貸借における原状回復
義務や敷金規定の明文化」や「組合規定の明文化」などがありますが、内容としては、
判例等で定着化しているルールの明文化であり、一般の企業に与える影響も大きくない
ものと思料されます。

一方、後者の「現代化」の観点からの見直しには、「保証規定の
見直し」「時効の見直し」「法定利率の見直し」「約款の導入」など、一般企業にも大き
な影響を与えそうな事項も含まれています。今回は、一般企業に影響を与えそうな事項
について解説します。



◆一般の企業に影響を与える改正
1.債権の消滅時効の見直し
民法で10 年、商法で5 年とされていた債権の消滅時効期間が、以下のいずれか早い
方に変更されます。あわせて、売掛金2 年、宿泊料や飲食料1 年といった短期消滅時効
が廃止され、統合化されています。
①債権者が権利を行使できることを知ったときから5 年
②権利を行使できるときから10 年

2.保証規定の見直し
個人が、事業のための借入を保証する場合は、経営者などの場合を除き、事前に公正
証書による意思確認が必要となります。また、保証に際し、主債務者(借入人)に自分
の財務状況などを説明する義務を負わせ、債権者には、保証人の求めに応じ、主債務者
の履行状況等を説明する義務を課しました。さらに、個人による根保証については、現
状の貸金等に加え、商取引や賃貸借取引の場合も極度額の設定が必要になります。

3.債権譲渡における見直し
債権譲渡契約において、譲渡禁止特約があっても、原則として譲渡は有効となるが、
譲渡禁止特約条件を知っていたか、重過失により知らなかった譲受人に対しては、履行
を拒むことができるとされました。また、異議をとどめない承諾の制度が廃止され、相
殺などの抗弁権(譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる権
利)を切断するためには、権利を放棄する旨の明確な意思表示が必要となります。

4.法定利率の見直し
民法で5%、商法で6%とされていた法定利率が統一され、施行時3%、その後は3
年毎に見直される変動制に移行します。

5.定型約款規定の導入
新たな規定として、現行民法に規定のない「定型約款」の規定が設けられます。本規
定は現行の商慣習をルール化するものですが、不特定の多数を相手方とする取引を対象
としますので、建設工事請負契約など約款に準拠する契約でも、企業対企業など特定者
間の取引の場合は適用されません。

6.瑕疵担保責任の見直し
売買などの瑕疵担保責任が債務不履行責任の一環として整理され、表現が「種類、品
質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合」に修正されました。また、買主等の
債権者の権利として、従来の損害賠償請求、契約解除に加え、追完請求と代金減額請求
が明記されました。


◆企業に求められる対応
上記以外でも、債務不履行による損害賠償規定の見直し、弁済や相殺に関する規定の
見直し、契約の解除や危険負担規定の見直しなどがなされており、企業の契約実務に与
える影響は大きく、民法施行時までに既存契約書の見直しが必要と思料されます。また、
前述の債権譲渡の見直し、時効や保証規定の見直しに加え、債権者代位権規定の見直し
なども含まれており、企業の債権保全・回収に与える影響についても検討が必要と思料
されます。


◆今後の予定
冒頭でも述べましたが、本法案は、4 月14 日の衆議院本会議で可決後、参議院に送
付され、4 月19 日に参議院法務委員会に付託されました。予想では、5 月にかけ参議
院の法務委員会で審議されたのち、6 月18 日の会期末までに参議院本会議で可決成立
2017. 5. 12